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会社案内

COMPANY

 

昔から「仕組み」を考えることが好きでした。特に事業の仕組みに興味がありました。

周囲を見渡すと見える景色は、そのほとんどが誰かの事業によって作られていると気が付いたとき、何気なく見えるこの事業はどういう構造になっていて、どんな人が作っているのだろうと、とてもワクワクしたことを覚えています。
そんな興味が長じて、学生起業をして自分で事業を作ってみたり、フェアトレードの活動に取り組んできたりした中で、考えたことがあります。
それはどんな境遇や属性であったとしても、情報や経験にアクセスができない状態、選択肢が限られている状態が生まれてしまうということ。
では、こうした状態を課題として捉えたとき、どうすれば私たちは「解決方法」を見いだせるのでしょうか。

その導きの糸の一つになるのが、ハンナ・アレントが『人間の条件』という著作の中で提示している「現われの空間」という仮説だと考えています。
彼女は、対話をする空間そのものを状態目標として位置づけています。有用かどうかとか、優劣かどうかに関係なく、どういう社会が良い社会かは、みんなで話し合って考えるしか無いよね、という態度を示しています。
私はこの考え方に共感します。純合理的な考え方が支配的になっている現代社会にあって、今こそこうした考え方に立ち戻る必要があると考えています。

こうした考え方をもって、私はフィノーカル株式会社を創業しました。フィノーカル=finocalとは、finance for localの略語で造語です。地域へ直接金融やインパクト投資といった仕組みを埋め込むことが可能なのかという問いと、一見、両立が難しい領域に自分たち自身も挑戦しようとする意思を会社名には込めました。

また、フィノーカル株式会社では会社として目指したい社会、即ちビジョンを「誰もが人生の主人公になれる世の中にする」としています。
この主人公、という言葉は、中国唐代にいた瑞巌(ずいがん)という禅僧が、毎日自分自身に向かって、「主人公」と呼びかけ、また自分で「はい」と返事をしていたという逸話から引用しています。禅における「主人公」とは、「誰もが生まれながらに持っているうそ偽りの無い自分自身」のことを指します。
みんなで「良い社会」について話し合うためには、まずは自分自身が「主人公」になり、しがらみや属性など様々な理由から健全な対話をすることが必要です。
だからこそ、フィノーカル社では「誰もが人生の主人公になれる世の中にする」ことをビジョンとして掲げています。

ビジョンを実現するためには、場所や目的を共有できる組織が社会の中にたくさんあることが重要です。そこで、フィノーカル社は組織として取り組む事業領域を「地域まちづくり事業」と「社会課題解決を目指す組織の支援事業」を主たる事業としました。

地域にあっては、地縁や血縁、地域への愛着といった共通の価値観などに基づいて自然に形成された共同体(コミュニティ)がそこかしこに息づいています。「良い社会とは」というあまりにも大きな問いは、「その地域をどうしたらもっと良い場所にできるか」という問いに置き直すと、自分たちの手触りのある問いに変わり、「自分事」に近づいていきます。

そして、こうした問いに向き合うためには、自分たちの周囲だけを考えるのでは無く、もう少し広い視野で考える視点が不可欠です。そうした広い視野は、「社会課題解決を目指す組織や人」には、字義通り含まれています。多くの人が時間を過ごすことになる「組織」をどうすればより「社会」に目を向ける存在にできるか、そして既にそうした視野を持つ組織を、どうすればより力強くできるかという事業に、私たちが取り組む必要があります。

ビジョンの実現には、「場」と「組織・人」の両輪が必要です。だからこそ、フィノーカル社ではこの2つの事業領域を主軸にしています。

目指したい社会はあまりに遠く、実現には途方もない道のりのように思いますが、その目指している過程そのものを目的として良いのだと、アレントは教えてくれます。
どうせ長い旅路なら、少しでも楽しい道のりにした方が良いです。
私自身まだまだ未熟者ですが、そんな「問い」を握りしめながら、長い旅路を仲間と共に歩んでいくことは諦めずに続けていきたいと思います。

フィノーカル株式会社 代表取締役 内山大志